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ESCORIAL
投稿日:2017/11/27 16:10
今回ご紹介する一着は、一見したところ何の変哲もない三つ揃いですが、原毛にストーリー性のあるとても面白い生地を使っております。
エスコリアルウール。小さな体格と縮れ毛が特徴のミニチュアシープで、カシミア以上の希少性を誇る素材です。
その由来を辿ると原産は北アフリカ、それが14世紀、イスラーム勢力のスペイン侵攻に伴いイベリア半島に持ち込まれた物のようです。
イスラームのスペイン撤退により取り残されたこの羊はその後スペイン王室の所有となり、
マドリッド近郊エスコリアル宮殿に集められ、最高級の服地として珍重されました。
その後絶滅したと思われていた彼らですが、様々な経緯を経てその子孫はEscorial Company Ltdの管理下に収まり、
廻り巡って弊社のお客様のお手元に届くことになりました。(丁寧にご説明したいのですがとてもBlogには収まりません…)
仕上がったスーツは極細番手らしいしっとりとした光沢をもちながら、原毛の特性によりナチュラルなストレッチ性があります。
来歴にせよ価格にせよ趣味性の高い生地ではありますが、それを誇る様子もなく衒いの無い仕上がりです。
あからさまな虚飾を廃した、着る人だけが分かればいいというそんな価値観が詰まった一着なのではないかと考えます。
贅を尽くすという言葉について考えさせられる、そんな生地でありました。
恵比寿店 須藤